母と過ごした1年と309日①〜癌を宣告された日〜

これから書くことは、僕の母が末期癌を宣告されてから亡くなるまでの話です。

僕はこの経験を通して、「自分らしく生きる」ということの奥底にある本質に触れることができました。それは母が身体をもって家族みんなに伝えてくれたことでした。

この文章を書いている今日、母親が亡くなってからちょうど2ヶ月が経ちましたが、僕は母の最期を看取ってから、「自分らしく生きる人をいっぱいにしたい」という想いが生まれました。

だからこそこの機会に、僕たち家族が経験してきたこと、僕の母が残してくれたことを思いっきり表現したいと思います。

目次

癌を宣告された日

2020年2月1日。当時58歳だった僕の母親が、|膵臓癌《すいぞうがん》のステージ4と診断されました。いわゆる末期癌です。

あとから聞いた話ですが、その診察の時に、母はみずから「私はいつまで生きられるんですか?」と質問したそうです。

それに対して医者は、なんのためらいもなく「手術はできない状態なので、抗がん剤をやっても1年、抗がん剤をやらなければ半年以内だと思います。」と言ったとのことでした。

そこに唯一同席していた父親のほうが面食らっちゃったみたいで、母は一切取り乱すことなく、「どちらにしても私は1年未満しか生きられないのですね。」とだけ言いかえして、あとは淡々と医者の話を聞いていたということです。

この時の母の気持ちを推し量れば、きっと「私は母だから取り乱してはならない」「母だからこそしっかりしなくては」「家族に弱いところは見せちゃダメだ」といった感じだったのかなと思います。

実はこの診察の1週間前から、母は急激に体調が悪くなって検査入院をしていました。だから僕たち家族も、「もしかしたら…」と最悪の事態は想定していたんです。

ただ、「末期癌・余命1年」というのはその想定をはるかに超えるもので、突然大きな悲しみの波が押し寄せてきたことを今でも覚えています。

2020年2月1日は家族にとって「絶望」の日でした。

目次